『奇跡講座』の原稿の歴史
Ⅳ . 非公開の口述記録が公開されてしまった経緯
ヘレンとビルは、私が決して彼らの信頼を裏切らないということがわかっていたので、私たちがアーカイブと呼んでいたもの − ノートやその後にタイプされたもののすべて − の管理を、私に任せました。ヘレンは頻繁にものを置き忘れたり失くしたりしましたし、ビルはそれほどまめではなかったからです。そうして私が、それらの文書の保管役になり、今でもこれらの資料は私の所有下にあります。
すでに述べた通り、私がここで話していることの多くは、拙著『天国から離れて : ヘレン・シャックマンと『奇跡講座』誕生の物語』の中にあります。私はそこに、ウルテキストの口述内容のうち、筆記に関するヘレンとビルの体験を理解するために適切なものは、大部分収録しました。私は、自分がこの口述記録から引用していたので、それを著作権で保護するべきだと思ったのですが、のちに判明したことからすると、どうやらそれは間違いだったようです。実際、私の賢明な妻グロリアは、そんなことをしないようにと私に警告していました。著作権のために準備するのは非常に大変な仕事でした。FACIM のスタッフは、全ての口述記録のコピーをとり、ワシントン D.C. にある米国議会図書館の著作権局に送りました。米国議会図書館以上に安全な場所があるだろうか、と私は考えたのです。
・・・私は、自分がこの口述記録から引用していたので、
それを著作権で保護するべきだと思ったのですが、
のちに判明したことからすると、
どうやらそれは間違いだったようです。
私は、ヒュー・リン・ケイシー版のコピーを持っていましたが、前にも述べたように、その原本は、ヘレンとビルがヒュー・リン・ケイシーに贈呈したものであり、最終的には、ヴァージニア・ビーチにある A.R.E. 本部の図書室の稀覯本の部門に収蔵されました。ちなみに、ヒュー・リン・ケイシー版というのは、実質的にはテキストのみです。何年も後になって、私が A.R.E. でいくつかの講義をしたとき、ヒュー・リンの息子であり、エドガー・ケイシーの孫にあたる、チャールズ・トマス・ケイシーが、グロリアと私を鍵のかかった部屋に案内し、何年も前に彼のお父さんに贈られていた原稿を見せてくれました。
周知の通り、ウィスコンシン州のエンデバー・アカデミーによる著作権侵害に関する裁判事件がありました。訴訟を起こしたのは、 『奇跡講座』 版元である FIPと、その姉妹組織であり、『奇跡講座』の著作権保持者である FACIM です〔訳注3〕。ここはその詳細を論じるべき場ではありませんので、彼らはこのコースに関して不適切なことをしていたということ、そして、私たちはそうしたことをやめさせようとした、ということのみ述べておきます。
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〔訳注3〕:『奇跡講座』の著作権は 2014 年には FIP に戻されている。
訴訟の一環として、私はエンデバーの弁護士によって証言させられましたが、その弁護士は、私に色々と尋問する中で、原稿のことについて尋ねてきました。私は、ヘレンと私が編集したヒュー・リン・ケイシー版が A.R.E. の図書室にあることに言及しました。この情報を武器にして、その後、誰かが、A.R.E. から原稿を非合法に持ち出し、そのコピーを取った後で図書室に返却しました。それは後になって、『イエスの奇跡講座』という名前で出版されました。彼らの主張は、私がイエスのコースを変更した人間であり、正真正銘の『奇跡講座』は「ビルが」編集したヒュー・リン・ケイシー版だというものでした。ですから私は、『奇跡講座』の教義について自分の勝手な考えを持ってやってきて、ヘレンを説得してこのコースを変更させた成り上がり者と見なされたわけです。このようなことを考える人がいるとは、理解に苦しみます。なぜならば、意味の点では何も変更されていませんし、すでに述べたように、ほとんどすべての変更は、テキストの初めの方で為されたからです。いずれにしても、彼らの主張は、FIP が出版した『奇跡講座』は真の『奇跡講座』ではない、というものでした。
そして、私が決してあり得ないと思っていたようなことが起こりました。偽りの口実のもと、筆記ノートとウルテキストが米国議会図書館から持ち去られ、コピーされたのです。連邦法違反です。私たちは図書館の法的権威者たちに相談しましたし、彼らは激怒していました。しかしながら、明らかに、この事件は彼らにとっては非常に些細な事柄でした。米国議会図書館は司法省の下にあり、司法省には、非常に小さな集団の中にいる者たちにしか重要性のない原稿を誰かが持ち去ったなどということよりも、他にもっと対処すべきことがありました。ですから、それについては全く何もなされなかったのです。私たちは図書館の職員から、こうしたことは二度と起こらないようにすると保証されました。しかしもちろん、私たちの状況においては、それは何の役にも立ちませんでした。不法に入手した口述記録(すなわち筆記ノート、ウルテキスト、ヒュー・リン・ケイシー版)を今や所持するようになった人々は、それらをスキャンし、あるいはタイプし直して、インターネットで閲覧可能なものや、どこかで購入可能なものにしてしまったのです。
さて、以上が、これらすべての口述記録が流出した経緯です。その裁判事件は2003 年に結審し、著作権は無効であると宣言されました。しかしながら、第二版で加えられた付加的な口述記録である『奇跡講座』の「まえがき」と、「用語の解説」、そして「精神療法」と「祈りの歌」という二つの小冊子には、「著作権無効」の宣言は適用されませんでした。それだけでなく、FACIM は今でも、筆記ノート、ウルテキスト、ヒュー・リン・ケイシー版の著作権を保有しています。
こうした裁判の結果、今では、あなたがアマゾン・コムに行き、『奇跡講座』を検索すると、もしあなたがこの背景を知らなければ、『奇跡講座』の原作として販売されているエンデバーやそのほかのバージョンを選ぶということもあるかも
しれないという状況になっています〔訳注 4〕。エンデバーのグループは、このコースにマタイの福音書も加えています。彼らはずっと、このコースと聖書は同じだと主張してきたからです。ですから、エンデバーのバージョンにおいては、あなたは全く、真のコースを得られませんし、ウルテキストやヒュー・リン・ケイシー版においてすら得られません。このほかにも、少なくとも二つのバージョンが販売されています。そういうわけで、今では人々は『奇跡講座』に関してやりたい放題なことができるようになってしまっているのです。
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〔訳注 4〕ここでは、米国内のネット書店アマゾンと『奇跡講座』の原書 A Course in Miracles についての話をしている。米国以外の国々では国際的な著作権条約が適用されるので、事情が異なる。
V. ヘレンと『奇跡講座』 へ続く